小悪魔な彼
6章 二人の出逢い
一瞬、何が起きているのか分からなかった。
唇につたわる、温かい感触。
まつげの数を数えられるほどの距離にいる峰岸くん。
「…!!」
気が付けばあたしは、峰岸くんに唇を奪われていた。
「やだっ……」
状況を把握して、峰岸くんの体を押した。
唇は離れたものの、体はビクともしない。
「は…なして……」
「嫌です」
あたしの言葉なんかまるで聞かない。
強い眼差し。
お願いだから、そんな瞳で見ないで。
「香澄先輩が、本気で俺を拒んだら離します」
「何言って……」
「今、本気じゃないでしょう?」
「…っ」
どこまでが図星なのか分からない。
自分では、峰岸くんのことをちゃんと拒んでいると思っていたから……。