小悪魔な彼
 
「そして俺は、高校に入って、初めてオシャレということを意識した。

 というわけです。
 すべては、香澄先輩に好かれたくて」


最後まで言い切ると、峰岸くんはにこっと笑った。


ようやく分かった。

峰岸くんが、入学前にあたしに会ったことがある、といった日のこと………。



「あの時の子……だったんだね……」

「覚えてるんですか?
 その生徒のこと」

「当たり前じゃん。
 あたしにとって、あの時からすでに、あの子は大事な後輩だったんだよ。
 無事に入れたのかな?って気になってた。

 でもこんなに近くにいたのに、気が付かなかったなんて……」


気が付かなかった自分に、腹が立った。


「気が付かなくて当たり前です。
 俺がそういうふうにしたんですから」


峰岸くんは窓辺から離れると、コツコツと歩いてあたしの前に立った。
 
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