小悪魔な彼
「……わ…」


待ち合わせ場所に着いて、思わず離れた場所で止まってしまった。

壁にもたれかかりながら、本を片手に読みふけっているその姿は、こんなあたしでもつい見とれてしまう様だった。


少しだけダメージの入ったジーンズ。
ワインレッドのTシャツに、黒ジャケを羽織る。


高校1年生で、あんなにもジャケットが似合う男はいないだろう……。


「いるなら、声をかけてくださいよ」
「え?」


つい声をかけられずに立ち尽くしていると、颯太のほうがあたしに気づいた。

パタンと本を閉じ、あたしのもとへ歩いてくる。


「ごめん……」
「もしかして、俺に見とれてました?」


意地悪く微笑む颯太。

悔しいけど、その笑顔すらドキドキしてしまう。
 
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