小悪魔な彼
「でも、今日は何するの?」
「映画を観に行こうと思って」
「映画?」
「はい。香澄先輩、この間、観たいのがあるって言ってたじゃないですか」
数日前の帰り道、確かにそんな話をした。
だけどその映画は……
「今回のもの、3だけど……
颯太、観たことないんじゃなかったっけ?」
シリーズ物の第三弾。
あたしは大好きな映画だけど、颯太は観たことすらなかったという。
だからその話は、とくに盛り上がることなくスルーされたけど……。
「昨日、1と2を観ました。
結構面白かったですよ」
「え、いっきに観たの?」
「はい。だって、さすがに観に行くのに、前作を観ないのはまずいじゃないですか」
さらりと返す言葉。
あたしが言いたいのはそうじゃなくて……
あたしと一緒にその映画を観るために、前作を借りて観てくれた、ということが嬉しかった。
「やるじゃん」
「何がですか」
「ううん」
つい、顔がほころんでしまったのは、隠した。