きょうもこたえはおしえません



午後10時、港の第二倉庫にて。

辺りはとうに静けさを纏っているというのに、唯一この倉庫内だけがやけに怒声が飛び交っている。

英語で侮辱の言葉が連なるなか、その外では警備用の黒服男が何人か見回っていた。


そしてその更に離れた場所にて。


「あーあーあー、雑魚が何人も集まっちゃって! 密売っつーのにこれじゃあ、ボクたちをみつけてくださいよーう、つってるもんじゃねえかっ。
かーっ、これだから群れるしか能のねえ人間はっ」


「その人間と行動してるお前もお前だけどな、っと」


「行動してるんじゃねえ、“行動してやってる”んだ」

「……へいへー」


己の鋭く長い爪をチラつかせ、ダルそうな男を一瞥する悪魔。

しかし気の抜けた返事に苛立ったのか、睨む瞳孔をさらに鋭くした。
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