The side of Paradise ”最後に奪う者”
「そうね」
少し考え込んだ。
「長年綺樹と付き合って、彼女の思考パターンが読めてきたことと、綺樹の環境に対して図太くなったみたいだから、それなら何とかなるかもしれないわね」
「それが全く、記憶が無いんだけど」
「ああ、そうだったわね。
じゃあ駄目だわ」
涼はライナの一刀両断に落胆笑いをするしかなかった。
「そういえば、あんたに返す物があったんだわ」
涼の顔を見ていて思い出したらしく、隣の部屋から持ってくる。
「ほら」
手渡されたのはずっしりとした腕時計だった。
確かに自分の腕時計だ、と思った。
手にしても女の顔を思い出さないということは、自分で買ったのだろうか。
買った時の記憶は思い出さない。