The side of Paradise ”最後に奪う者”
9.嫉妬を知る時

  *

さやかがランチを誘ってきた。

書類の整理をしていた綺樹は顔を上げた。

休職を決めてからというもの、引継ぎばかりでそう切羽詰っていなかった。

行かない理由が無いので、ついていった。

NYを離れるから、しばらくさやかとも会わなくなるし。


「本当に時間が経つのは早いものね」

「そうだね」


綺樹は水のグラスに手をつけた。


「もう生まれるね」

「そうね」

「フェリックスはいつこっちに来るの?」

「予定日の前日にしたわ」

「前日?」


綺樹は眉をしかめた。


「しょうがないでしょう?
 向こうの仕事があるんだから」

「うん」


綺樹はちょっと躊躇した。
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