The side of Paradise ”最後に奪う者”
「ええ、そうですね」
「その言い方は、涼に放って置かれて怒っているの?」
綺樹は鋭くさやかを睨んだ。
もしさやかじゃなかったら、何か痛烈に言っていただろうし、席を立っていただろう。
だから婉然と笑って答えてやった。
「いいえ。
全く」
こうなったら接待だろうがなんだろうがしてやる。
どうせこいつは私の愛した涼じゃない。
双子の別人のようなもんだ。
綺樹はグラスに口をつけた。
さやかは自分が居てはと思ったのか、ほどなく席を立って行ってしまった。
何を話すと言うのだ、この男と。
綺樹はナイフを動かした。
切るだけ切って、細切れの山を作るだけで、一口も口にしない。
どの料理もだ。
この間、東京で会った時よりも、あきらかに痩せた。
涼はぞっとした。