The side of Paradise ”最後に奪う者”
「いつまでダバリードに?」
綺樹はコーヒーを持ってこさせた。
「8月中旬ですね。
9月から新学期ですので」
「そうですか。
どちらに行かれるのですか?」
「ボストンに」
綺樹はコーヒーにミルクを大量に入れた。
この頃はこうでもしないと胃が痛む。
涼は結局、液体しか口にしなかった事態に恐怖を感じていた。
そしてこの恐怖は身に覚えがある。
「ボストンには行ったことがありません。
次の時に案内してくださいますか」
綺樹は肩をすくめた。
そんな約束できるか。
凄くげんなりする。
人の仕草や癖は記憶が無くたって変わらないんだな。
気が滅入る。
早くこの男から離れたかった。