The side of Paradise ”最後に奪う者”
仕事で来たとはいえ、そもそも何で私が相手をするんだ。
この間の調印だって冗談じゃなかったのに。
絶対、姿を見せないと決めていたのに。
さやかにだって話をしてあったじゃないか。
東京の夜を思い出してしまって、目を閉じた。
やっぱりああいうタイプの女だ。
「ご気分が悪いですか?」
目を開けると、涼と目が合った。
思いがけない衝突事故だ。
「いえ」
綺樹は息苦しさを感じた。
表情の作り方まで変わらない。
「煙草を吸ってきます」
綺樹は失礼なのをしりつつ、返事を待たずに席を後にした。
それ以上一緒にいられなかった。