The side of Paradise ”最後に奪う者”

「あの子。
 あなたの子を流産したの。
 その時まで自分が妊娠していることも気づいていなかった」


涼は血の気が引くのがわかった。


「あなたの手術の前に気づいていたら、術後の経過を見て離婚したでしょう。
 大事なものを気づいたら二つも自分から捨ててしまっていた。
 自分がずっと欲しかったのは家族なのに。
 それを自分で砕いた。
 だからなのかしら。
 感情と言うものを起こさないようにしている」


二人の間に重い空気が沈みこむ。


「また来ます。
 たぶん、お手を借りることになると思います」

「ええ、いつでもどうぞ」


涼はさやかのオフィスを出ると綺樹のオフィスに向かった。
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