The side of Paradise ”最後に奪う者”
3.意外な結婚
*
会議が長引き、終わった頃は夜も遅かった。
さやかは綺樹と会議室を後にすると、再度打ち合わせのために自分の執務室に招いた。
インドの携帯事業は山場だった。
綺樹もピリピリとしていた。
いつも以上に神経質に確認していく。
でも顔はいつもどおり無表情だったし、声の調子も淡々としている。
さやかはいつもながら、プライベートとビジネスでの違いに面白さを感じていた。
「じゃあ、その件の結論が出たら、報告して頂戴」
「ん」
綺樹はちょっと顔を伏せて、バインダーを閉じた。
長くなった前髪が落ちる。
すっかり冷めたコーヒーカップに手を伸ばした。
「でもまあ無事に会議も終わったし、一安心かな」
さやかは女性的な雰囲気を消して、男性的な面を強くしている綺樹の顔を眺めていた。
「順調な様ね」