The side of Paradise ”最後に奪う者”
「日本に行っても面白いことが何も無いし」
子どものように屈託の無い物言いに成介はため息をついた。
「社長と会うことを楽しみにしてくれませんかね」
「うーん。
昔の涼は食指が動いたんだけど、今の涼は全くタイプじゃないんだよなあ」
どういう積もりの発言かわからなかった。
成介はため息をついた。
「諦めろ、成介。
じゃあな」
電話が切れた。
成介は苦りきった表情だった。
参ったな。
予想に反して記憶は全く戻らないのに、恋心をどんどんと募らしている。
涼の性格を知っているだけに、何かのきっかけで暴走しないか心配になる。
綺樹のことになるともの凄く激情型になり、上手くいかない時は、そのガス抜きの仕方がわからないので溜まりに溜めて爆発する。
他の大抵の事は、あっさり、か、のらりくらりとかわすのだから、自分でも
対処の仕方がわからないのか。
「犯罪だけはやめてくれよな」
成介は呟いた。
それか。
車に乗ってくるといって出て行ってしまった涼の背中を見送る。
事故死か。
どちらも頭が痛かった。