The side of Paradise ”最後に奪う者”

「日本に行っても面白いことが何も無いし」


子どものように屈託の無い物言いに成介はため息をついた。


「社長と会うことを楽しみにしてくれませんかね」

「うーん。
 昔の涼は食指が動いたんだけど、今の涼は全くタイプじゃないんだよなあ」


どういう積もりの発言かわからなかった。

成介はため息をついた。


「諦めろ、成介。
 じゃあな」


電話が切れた。

成介は苦りきった表情だった。

参ったな。

予想に反して記憶は全く戻らないのに、恋心をどんどんと募らしている。

涼の性格を知っているだけに、何かのきっかけで暴走しないか心配になる。

綺樹のことになるともの凄く激情型になり、上手くいかない時は、そのガス抜きの仕方がわからないので溜まりに溜めて爆発する。

他の大抵の事は、あっさり、か、のらりくらりとかわすのだから、自分でも
対処の仕方がわからないのか。


「犯罪だけはやめてくれよな」


成介は呟いた。

それか。

車に乗ってくるといって出て行ってしまった涼の背中を見送る。

事故死か。

どちらも頭が痛かった。
< 132 / 819 >

この作品をシェア

pagetop