The side of Paradise ”最後に奪う者”
「ベルギー人だったけど。
顔立ちも雰囲気もどことなく似た感じがあった。
だから1年かけて仕込んだわ。
涼を撮ったビデオを見せ、動きや言葉の間のとりかた、何でもを身につけさせた。
綺樹と寝ているビデオも勿論」
フェリックスが表情を少し止めたのに、さやかは肩をすくめた。
「当然でしょう?
そして、綺樹がバーに繰り出した時に、声をかけさせた。
一晩過ごした時は成功したと思った。
でも」
さやかはふっと息を吐く。
フェリックスにはその先を言わなくてもわかった。
「それぞれの人に、気付かなくともそれぞれの体臭がある。
分析して作ってみようかと思ったわ。
しかしその上、それぞれの空気感がある。
存在感とでもいい。
雰囲気とでもいい。
何と言ってもいいけど、涼のそれは、真似しづらいのよ」
底抜けに明るいようで、でもどこか悪魔のように不気味な影を感じる。
そして何よりもあの襲い掛かられるような色気が難しい。