The side of Paradise ”最後に奪う者”
「だから。
相変わらず、綺樹が幾晩も過ごした男は涼と」
さやかは区切ってフェリックスと目を合わせた。
「あなただけ」
また微妙な沈黙だった。
お互いを推し量ろうとしている。
長い沈黙だった。
「さやか」
大抵の場合、フェリックスは相変わらず女王と呼んでいた。
だから名前を呼ぶ時は対等な立場で意見を言う時だ。
「ウルゴイティの跡取りが出来たからといって、私を綺樹にあてがおうとしないことだな。
私は君の夫であり、和の父親だ」
しばらくさやかは見つめたままでいてから、微笑した。
「そうね。
あなたは私の夫であり、和の父親よ」
そういうと、そっとフェリックスの肩に頭を載せた。