The side of Paradise ”最後に奪う者”
階段を上がる足音がして、一瞬止まった。
涼が顔を向けると、綺樹だった。
本を小脇に抱えている。
涼のことは見もしなかった。
ゆっくりとドアまで来ると、無言のまま鍵を差込み回した。
そのまま躊躇なく閉められようとしたドアを、すんでの所で涼は掴んだ。
綺樹の身を押すように、一緒に自分も部屋に入り込んだ。
腕を掴んでは払われ、掴んでは払われながら壁に追い詰める。
身を引き寄せ、頭を引き寄せようとして抵抗するのに、涼の爪が誤って綺樹
の頬に傷をつけた。
赤く蚯蚓腫れに針でつついたように血の赤いしずくが転々と浮かぶ。
しばし二人は睨みあっていたが、一瞬の隙に涼はくちびるをあわせた。