The side of Paradise ”最後に奪う者”
こんな雨の朝は、ただでさえ広く静かで重苦しいこのペントハウスの雰囲気に、負けそうになる。
それでもこのペントハウスはお気に入りだった。
とても落ち着く。
自分に流れるウルゴイティの血のせいか。
今、ここは自分にとって繭みたいだと思っていた。
たとえ涼と短い結婚生活を過ごした思い出があっても、損なわれはしなかった。
あまりにも短かったから、涼の物を一切処分し、少々内装を変えてしまったら、もうあの時間は夢のようだった。
そうだ。
あの結婚に至るまでの過去を思うと信じられない。
自分が勝手に作り出した妄想のようだ。