The side of Paradise ”最後に奪う者”

「どうした?
 何をカリカリしてるんだ?」


カチンときた。

吠える前に、綺樹がわざとしていることにやっと気が付いた。


「からかってる?」


綺樹がまた軽く笑っている。


「明日は?
 昨日は忙しくて、まだスーツケースを開け終わっていないんだ」


それでも電話をしてくれたことに、涼はちょっと嬉しかった。


「何か食べたいものは?」

「食べたいものはないけれど、有名どころで、堅苦しいところは嫌かな。
 仕事で食事をしている気になるから」

「わかりました。
 また電話します」


電話を切った後、凄い脱力感に襲われる。
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