The side of Paradise ”最後に奪う者”
留学か住んでいたのか、外国から帰ってきた男は妙な自信を持っている。
いまいましい。
涼は急ぎ足で歩み寄って、無言でひたりと男をみつめた。
男は怯んだ気持ちを隠しながら、綺樹に視線を戻し、笑いながら挨拶をして去って行った。
おかしそうな色を浮かべて綺樹は涼を見上げる。
「遅れてすいません」
「構わない。
暇つぶしをしていたから」
指に移していた煙草をくわえると、テーブルの上に開いたままの本にコーヒーショップのレシートを挟んで
閉じた。
5センチぐらいの厚さのあるハードカバーの洋書は哲学書のようだった。
煙草の火を消して、きゃしゃなビーズ刺繍のバッグと本を手に立ち上がった。
涼が飲み物を片付けて戻ると綺樹はこちらを見て待っていた。
「行きましょう」
綺樹は小首を傾げた。