The side of Paradise ”最後に奪う者”
「着替えてきたの?」
涼は背広ではなかった。
「うちの会社もクールビズをやっているんです」
「くーるびず?」
「冷房の設定温度を上げるため、暑苦しい背広は止めましょう。
二酸化炭素を減らせてあなたもエコに参加できます、という政府の方針があってね」
綺樹が鼻を鳴らして馬鹿にした。
「もっとも、お前のところは、社長がネクタイを締めたくないだけだろう」
ネクタイを締めるのを嫌っていることを知っての発言だろう。
涼は笑った。
「よくご存知で」
「絞首刑だって毎朝言っていたぞ。
いい加減慣れればいいものを」
諦めが悪いと綺樹が続けた。