The side of Paradise ”最後に奪う者”

記憶の無い涼は笑って、曲がる角のところで綺樹の背中を軽く押し、誘導した。

さらりとした手触りの向こうの暖かさ。

妙に手に残ってしまう。


「クールビズになると中々服装が困るよ。
 背広の方が楽」


並んで歩きながら、そうか?と片眉を上げた。


「似合ってるよ」


涼は微笑した。


「あなたも」


そう。

今の記憶がある限りでは、パーティー以外でスカート姿を見たことが無い。

しかも足が見えるのは初めてだ。

本人の印象よりも華奢で、足首が特に細い。

膝下の長さは、やはり外国の血が入っている。


「黙っていれば外見は深窓の令嬢だよ」


普通の女性には言えない台詞だ。
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