The side of Paradise ”最後に奪う者”
*
フェリックスはさやかの電話で眠れない夜を過ごした。
いつもどおり屋敷の書斎に入り、自分の席に付く。
物音がしたのに何気なく目をあげて、ぎょっとした。
「おはよう」
綺樹が互いの書斎の境目に立っていた。
言葉が出なかった。
「おまえ」
顔色はいつも白い。
だがくちびるまでもが、土気色を通り過ぎ、白みを帯びていた。
「なに?」
「病院はどうした」
綺樹は肩をすくめた。