The side of Paradise ”最後に奪う者”
“この手紙を読んでいるということは、嫌な予感が当たり、思い出していないのだろう。
綺樹が望むから手術を受けることにしたが、嫌な感じがしてしょうがない。
周到な準備をするには時間が無い。
読んでいる自分に、妻の綺樹・デ・ウルゴイティを、あるいは市川綺樹を思い出せと伝言を残す“
どこかの紋章の入った立派なレター用紙だった。
金色で誰かのサインが小さく右上に印刷してある。
最初の数文字は読めた。
Ayanaだ。
手紙の最後にNYの住所と電話番号、携帯番号とが殴り書きしてあった。
自分の携帯に残していたメモと同じ番号だ。
アメリカの携帯番号なのか。
妻?
日本の戸籍謄本が入っていた。
勝手に心臓が早く打っていた。