The side of Paradise ”最後に奪う者”

「いい空間だな」


少し目を細めて顔をほころばせる。


「気に入った?」


涼もダイニングテーブルに歩み寄った。


「ああ。
 台風の夜にこの場所にいてみたい。
 ベートーベンのテンペストを聞きながら。
 いや交響曲7番の2楽章のほうがいいかな」


涼は笑いながら綺樹のウエストに両手をかけると、テーブルの上に持ち上げた。

なんの躊躇いも無くくちびるをあわせる。

いつもと違って無理して隠さなくていい。

綺樹は涼の首に両腕を回した。

足を涼の腰の後ろに回す。

もう止まらなかった。

感情を隠さなくていい、思う存分甘えていい。

もうこれで最後だから。
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