The side of Paradise ”最後に奪う者”
「座ったら?」
涼は言われるがままに隣に腰をかけ、上体をひねって引き続き地平線を見つめる。
ちょうどよかったので綺樹は背もたれ代わりに寄りかかった。
「人生を悟ったような顔をしていたよ」
綺樹は煙草をくわえたままくつくつと笑った。
「一体、私はいくつだよ」
綺樹は涼の小言が始まる前に煙草を消した。
「そんな高尚な物思いでなくて、凄く俗っぽかったんだけど」
頭を半分のけぞらせるようにして涼を見上げる。
「肌に残っている、おまえのくちびるや指や肌の感触を沁みこませていただけ」
いたずらっ子のように目をきらきらさせていた。
涼はからかっているのがわかっているので、少し笑みを作っただけだった。