The side of Paradise ”最後に奪う者”
「賭けなんてしないわ。
綺樹が一番よ。
中絶させましょう。
本人には気づかれないように」
なんて、運の悪い子なのだろう。
あれほど求めているものを二度も。
知らせてはいけない。
私だけ知っていればいい。
さやかが病室に入ると、綺樹が携帯を手にしていた。
「電話?」
「うん、もう終わった」
綺樹はちょっと目を伏せた。
涼の最後の言葉がとても怖かった。
記憶が戻ったのか?
それとも伝える内容だけに、ああいう言葉遣いだったのか。
でもどっちでも別に自分たちのあり方は変えられない。
それにこれからはもう一人じゃない。
綺樹はそれがとても嬉しくて、そしてとても安堵感を感じていた。