The side of Paradise ”最後に奪う者”
そうだったのか。
さやかは一つ息を吸って、静かに語りかける。
「私たちはいつでも堅実すぎるくらいに物事を進めてきたわ。
だから若い女性二人が追い落とされないで、ここまできた。
赤ちゃんが、無事に生まれるかどうかの賭けなんて乗れない。
私にはあなたを失うことなんて、ありえないの」
だいぶたって綺樹は声を詰まらせながら言った。
「だけど、だけどね。
戻るつもりは無かったんだ。
あの子が生きようとしていたから」
涙が怒涛のように溢れ出した。
「最期のチャンスだったのに」
さやかは頬と頬をあわせていた。