The side of Paradise ”最後に奪う者”

「あの経済危機の後、うちも大変なんです。
 今の社長に時間の余裕はありません。
 一人への深い援助よりも、多数の浅い幸せに動く地位ですので」

「わかっていて、あえて連絡をとったのよ。
 違う意味でタイミングが悪かったの。
 やっと立ち直りかけて、大学に通い出せていた時だったのに」


またさやかが躊躇った。


「つまり、あの子の承諾を取らないで中絶させた後だったのよ。
 流産のときもかなりの傷になっていたけど、今回も精神的にダメージが大きくて、手術の後は発狂寸前だった」


西園寺側は恐ろしい静けさが訪れた。


「医者の見立てで、その時の心臓の状態では、子供を外に出しても生き残れるぐらいの状態まで、お腹で育てることが出来ないとのことだったから、方法が無かったのよ。
 みすみす綺樹もお腹の子も両方殺すことはできないでしょう」


さやかは同意を求めるように片眉を上げた。

成介は諦め顔だった。
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