The side of Paradise ”最後に奪う者”

成介は不機嫌気味に眉をひそませた。

ぬかった。

彼女は女王だった。

たぶん見抜かれた。

誰にも気付かれずに隠し続けている感情を、一瞬の隙で。


「ええ、重体なの。
 精神が」


さやかは涼に視線を戻し、さらりと答えた。

予想通りの答えに涼は奥歯を噛み締めた。

たかが肉体の重体なら、さやかはこちらに手渡さない。


「人としての生活を放棄しているわ。
 自ら行動を起こすのはトイレぐらい。
 しゃべらないし、食べない。
 昨日は脱水症状を起しかけた」


しばし、涼はさやかを見つめていた。
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