The side of Paradise ”最後に奪う者”
*
ふっと部屋の空気にエゴイストの香りが混じった。
それでも綺樹の表情は変わらなかった。
一人掛けの椅子に投げ出されたように座っている。
フェリックスはドアの所に立ち止まったまま、しばらく見つめていた。
「下がっていい」
横に控えていた使用人へ少し顔を向け、告げる。
二人きりになると、フェリックスはゆっくりと歩み寄り、椅子を綺樹の前に引き寄せて座った。
表情も変わらなかったし、視線も動かなかった。
「おまえは」
フェリックスは言葉を詰まらせた。