The side of Paradise ”最後に奪う者”
「だれ?」
相変わらず静かなアルトの声だったが、小さな刃物が含まれ、凄みがあった。
「彼自身ですよ。
1年前に仕組んでありました。
弁護士を介して自分自身にあなたに関する書類を残していました」
また少し間があってから、軽やかな笑い声がした。
「やってくれるね、涼も。
あいつって時々そういう策を巡らすよな」
「どうしますか?」
「どうする?
思い出してはいないんだろう?
ほっとけば?
親切心など起して、あれこれ私との過去を聞かせる必要はないよ。
そちらサイドは、私と切り離しておきたくてしょうがないだろうし。
大丈夫。
私は一切彼と関わる積りは無いから」
「いいんですか?」
「なにが?」
成介に聞かれたことが癪に障ったのか、ひどく冷たい声だった。