The side of Paradise ”最後に奪う者”

「腫瘍がわかった日に。
私から解放されるのも悪くない、と。
 冗談のつもりだったようだが。
 でも私はそれが本心だと思う。
 だから」


再び紙の触れる音がしだす。


「いいんじゃないか?
さっさと見つければ?
私の存在を知っただけで思い出したんじゃないならば、ほっとけばいい。
涼の性格を考えれば、たいして害にならないよ。
気にしやしないさ。
私も会うつもりもないし、関わるつもりも無い」


成介が少し意地悪な顔になった。


「そこまで関わりを避けるのは、彼がそう言ったことを恨んでいるからですか?」

「恨む?
まさか」


綺樹はひどく驚いたようだ。

実際その姿が見えないのに、なぜか可愛らしい印象を受けた。
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