The side of Paradise ”最後に奪う者”

「今日は店じまいにするか。
 まあ、あいつは季節の変わり目には必ず風邪をひいているから、そんなに心配はないと思うけど」

「結構、思い出してきたみたいですね」


涼は無言だった。

成介は涼が急速に思い出してきているのに気が付いていた。

たぶん、綺樹が心停止を起した頃からだ。

だけどそれについて触れたのは、今が初めてだった。

もし思い出していなかったら、さやかの依頼を断わっていただろう。

知人関係に過ぎないからと。

保護者になるには歴史が浅すぎて、そこまで行動を起す原動力にはならない。

あの時に、涼は一度も自分が保護者的役割をすることの疑問を口にしなかったし、様子も見せなかった。

当然だと受け止めていた。
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