The side of Paradise ”最後に奪う者”
ベットに近づくと薄目を開けた。
「どうだ?」
額に手をあてて熱を見る。
風呂に入れずにいる綺樹の前髪は、しっとりとしていた。
「アイス、買ってきたけど食うか?」
綺樹の視線が保冷バッグに止まった。
「好きなチョコアイス」
取り出して見せると、少しくちびるが動いてから身動きした。
涼は手を貸して上体を起させた。
甘ったるい香りが強くなる。
ああ、そうか、綺樹の体臭が混ざっているのか。
「ん」
アイスの蓋をはがして、プラスティックのスプーンと共に渡す。
綺樹は手渡されたアイスをじっと見つめているのを、涼は見下ろした。