The side of Paradise ”最後に奪う者”

   *

涼はちらりと時計を見てからバタバタと後片付けをした。


「お疲れ様です」

「ああ、じゃあな」


あわただしい足音で出て行くのを成介は見送り、自分も退席にする。

エレベーターホールには、まだ涼がエレベーターを待っていた。


「お約束ですか?」


階数表示を見上げていた涼は成介をちらりと見た。


「いや」

「ああ」


成介はにやっと笑った。


「まあ、早く帰りたいですよね。
 待っている人が待っている人ですから」


涼は苦い顔をした。


「そんなんじゃない。
 ジムに寄って帰るんだ」


成介は来たエレベータに一緒に乗り込んだ。
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