The side of Paradise ”最後に奪う者”

あれから何度も聞いた“She”。

いままで過ごした日々は天国であり、地獄だった。

ipodを手に綺樹の寝室に入る。

SoundDogに繋いで再生すると、薄目を開けた。

耳を傾けている様子に、涼は枕元に腰をかけ、髪をかきあげた。

相変わらずまつげ長いな。

外国人の血からか鼻梁は高いが、くちびるの形は日本人の血からか小作りで可愛らしい。

思わず目元にキスしそうになり、涼は手をひっこめた。

せきばらいをして、ipodの画面を読む。


「しかし。
 なんだか辛気臭い曲だな。
 強制収容所に向っているみたいだ。
 おまえが葉山の別荘で似合うといった意味が全くわからん」


曲はベートーベン交響曲7番の2楽章になっていた。
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