The side of Paradise ”最後に奪う者”
「いや。
綺樹に電話をかけたんだが、変なんだ。
機械的に相槌を打つだけで」
「わかりました」
自分で車を飛ばし、西園寺の屋敷につくと、物音に藤原が出てきた。
「当主から電話があって来たんだが、一人で大丈夫だ。
おまえは休んでいなさい」
成介は階段を早足で駆け上がった。
ドアを開けたリビングは煌々と灯りが点り、テレビもオーディオもついていた。
ざっと見回し、人気がないのに、浴室の方を見る。
衣擦れの音を聞いて、ソファーを回った。
綺樹は床に座り込んでいた。
「あなた・・。
酒は駄目でしょう」
成介の声に驚くことも、顔を上げることもなかった。
こんなに部屋は明るくても、綺樹の周りの空気は黒かった。
成介は軽くため息をついて、同じように床に座った。
「もらいますよ」
手酌でグラスを満たす。
二口ほど飲んで、改めて綺樹を眺めた。