The side of Paradise ”最後に奪う者”
「あの男、あなたの様子がおかしいのに、あせっていましたよ」
ごとりと綺樹は持っていたグラスを床に置いた。
立てていた膝に額をつける。
「うんざりだ」
綺樹が口にしたのは英語だったが、日本語だとそういう意味だった。
いやスラングだったから、“うざい”という方が近いか。
「まあ、そう言わずに。
あの男もあなたに関しては、心配性なんですから」
「いつも、うじうじ悩んでいる。
生産性がない。
しっかりしろと張り倒せよ。
こうやって悲劇のヒロインぶって、男の気を惹いている。
鼻持ちなら無い、こんな女など、捨てておけばいいんだ。
ゴミだ。
ゴミでしかない」
成介は口を開いて、閉じた。
どうやら、どっぷりと自己嫌悪に溺れているらしかった。
「あなたが。
あの男みたいに、前向き過ぎたら、気持ち悪いですけどね」
なんとなくフォローする。