The side of Paradise ”最後に奪う者”

「ここで私が力いっぱい否定をして、あなたの良さをアピールしたって、嘘くさいので止めておきますが」


だけど、このままにもできない。

成介はじろじろと綺樹を見下ろした。


「あなた、あの男の母親じゃないんですから、少し厳しくした方がいいですよ。
　この表現は、少し婉曲すぎますかね。
　そうですね。
　あの男も、大の大人なんですから、自分の幸せぐらい、わかっていますし、選択できる分別もあります。
　あなたが心を砕く必要は無い。
ほおって置きなさい」


聞いているのか、わからない。

全く動かなかった。


「今回、あなたを引き取るのも、あの男が選択したんです。
　どうなるかわかっていて、です。
　あなたが相当な鼻持ちのならない女だとしても、あの男はあなたが来て、もう幸せで幸せで、頭の中は花畑です」


成介は綺樹へと身を乗り出した。