The side of Paradise ”最後に奪う者”
綺樹は人差し指でカレンダーの縁を押さえつけ、ぱたりと机に伏せた。
煙草と水割りのグラスを手にして書斎を出た。
広いリビングでCDをかけるとソファーに横になる。
目の前の壁に、等間隔に掛けられている5枚のモノクロ写真を、見るとはなしに眺める。
涼が放浪の旅に出るきっかけになった写真集。
その写真家にコンタクトをとって、彼が実際に訪れた土地の写真だけ、新たにプリントしてもらった。
涼は危険を避けるため、カメラを持たずに旅をした。
だからせめて記念と思って、手配をしていた物。
渡す前に別れてしまった。