The side of Paradise ”最後に奪う者”
そうだな。
確かにそうだ。
綺樹は苦笑してカートを押した。
二の腕に涼の指の感触が残っていた。
涼と。
一緒に寝れることは無いんだな。
あの背中に腕をまわして、肩にあごを乗せることとか。
足を絡めて眠ることとか。
させてあげられないんだ、当然それもなしだな。
何事もペイとリターンだ。
というか、知人関係に戻すんだった。
綺樹は口元で微笑した。
涼のいる通路にカートをいれる。
ああ、なんだかすっかり迷い込んだな。
ふっと思って、足を止めて天井まである書架を見上げる。
壁は高いな。
ほこりと紙の焼けた匂い。
「はい、これで終了」
本を置く音と振動が手に伝わってきた。
綺樹はゆっくりと視線を書棚から離した。