The side of Paradise ”最後に奪う者”

何年か前だったら、二人の前に姿をさらして、挑むように涼に笑いかけられた。

それが今や気づかれないように逃げ出す。

情けなかった。

そして羨ましい。

ああいう風に涼に笑いかけられるなんて。

ああいう風に手を繋いだのって、いつのことだ。

思い出せない。

もしかしたら無かったかもしれない。

そうか無かったか。

本当に。

私は。

ここで何をしているんだろう?

不要だってわかっているのに。

ああ、違う。

仕事をやり遂げて、知人関係にして、涼の元から離れなくては。

そうだ、成介が言っていた。

“フリでもいいから、まともに戻らないと”

まともなフリをするんだ。

そうだ。

まともなフリ。

まともな。
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