The side of Paradise ”最後に奪う者”
確かに過去はそうだったかもしれない。
でもまあなんとかやっていけているし、向こうがあんな調子だ。
このままでも構わないような気がしてきていた。
差しさわりがなく1年過ごしたのなら、この後もこのままで問題がないということだ。
そもそもじっくりと写真を見て、電話の会話を思い出すと、自分の好みのタイプとは遠く、何かをしようという気にあまりなれなかった。
なんせ、写真や物などのきっかけがあれば、すぐに記憶が戻るのに、これだ
けの物がそろっても全く思い出さないのだ。
自分の中で、妻だった女は大した存在ではなかったのではないだろうか。
記憶が戻らない理由はそこでは。
記憶の穴が開いている原因と、ふと物を凝視する原因がわかって、すっきりした気分だった。