The side of Paradise ”最後に奪う者”
瞬は上体を倒して、綺樹の肩に額をつけた。
「綺樹さん。
ちょっと抱きしめてくれる?」
綺樹は何も言わずに背中に手を回してくれた。
本当に不味いな。
瞬は目を閉じて思った。
NYへ去られたときに、追いすがるような本気には、なりたくなかった。
涼みたいに。
瞬は体を離した。
「夕食、食べに行こうか」
「これに目処をつけてしまいたいから、行っておいでよ。
私は適当につまんでいたから、お腹がすいていないし」
心が冷える。
恋人同士のように甘い空気はいつも無かった。
今も同居人のような会話だ。
「外では、一人で食事をしても楽しくない」
「じゃあ、食事相手を呼んだらいいよ」
綺樹は立てた膝に頬杖をつき、斜めに瞬を見上げながら口元で笑いを作った。