The side of Paradise ”最後に奪う者”

以前、家系図を見たことがあるが、少産の上、早く死ぬ者が多い。

成介の妻、響子もそうだった。

二人はいとこ同士だ。

当然のことながら西園寺の血を引く者も少なくなり、涼の相手となれるような年頃の血族者はいない。

だからかろうじて、外から妻を娶ることを認められたようだ。

成介が再婚しないのは、後継者ではない成介までには認められないのだろう。

東京で過ごした夏、ジャズを聞きに行った夜に、涼が成介の結婚について、言い淀んだ理由はそこだ。


「響子は死んでよかったかもしれません」


成介は綺樹の思考を読んだらしかった。


「全て外向きの事が整った後でしたから、私と響子は結婚できましたが、そうでなければ響子はあの男と結婚しなくてはならなかったでしょう。
 でなくても、今、生きていたら。
 響子はあの男の子を生むことになっていたでしょう」


綺樹はしばらく成介の横顔を見つめていた。
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