The side of Paradise ”最後に奪う者”
「彼女には耐えられませんよ。
初恋の相手と結婚できるのが、何よりも幸せと感じる女性でしたから」
「そうだな」
数度しか会ったことがないが、よく覚えている。
儚げな人だった。
「そしてこのままだと、花蓮がその役を務めることになります」
成介は綺樹へ顔を向け、目を見据えた。
成介がずっと涼と自分の問題に、これほどまでに労力を裂いているのは、ただひたすらに娘への愛情ゆえだ。
成介は娘の普通の幸せを願っている。
願うだけでなく、生活や学校などあらゆる面で新しい道を切り開いてきた。
「わかったよ」
綺樹はしばらくペリエの入ったグラスを両手で挟み、泡がはじけるのを見つめていた。
「でも、やっぱり、だめかな」
淡く笑い、息を吐きながら呟いた。
成介は視線だけ隣の綺樹に流した。