The side of Paradise ”最後に奪う者”
「いや、涼が、じゃなくて。
私が子供を育てることは、だ。
この心臓だから。
いつ死ぬかわからない。
まだ乳飲み子の時だったらどうする?
こちらのエゴで天涯孤独にするわけに行かないな」
乾いた笑い声を出した。
「ま、やっぱりそんなもんだな。
ああ、だけど涼の方は、望まれるなら提供するよ。
どうせ私には使い道が無い」
成介はまたむっつりとした顔で口をつける。
「エゴが絡まないことなんてありません」
「このことに対しては気にするな。
殴るほどでもないし、デリカシーの無い話でもない。
父親の愛情の深さというのを見せてもらったよ」
成介はグラスから口を離して横目で綺樹を見た。
にっこりと笑顔を向けられる。
「花蓮、可愛いもんな」
綺樹は朗らかに言うと、成介は正面を向いたまま少し口元を緩めた。