The side of Paradise ”最後に奪う者”
「この間の件を、あの男に提案し直しました。
まだこの先、わかりませんよ」
綺樹は顔をむけて耳をひざにつけ、微笑した。
「しぶといね」
「娘の人生がかかっていますから」
この間、言われたことを逆手に取る。
綺樹は微笑を広げた。
「そうだったね。
おまえの本当の狙いはそれだものね。
社長業を継ぎたくない、ではなくて。
強いよな。
そういうのって」
呟いてから、無言のまま外を見ているのに、成介は部屋を出た。
秘書室に戻ると執務室には涼が戻っていた。
むっつりとした顔をしている。
この人が仕事ではこういう顔をしないのを良く知っていた。
ノックして入ると涼がちらりと見た。
「綺樹が来ていたんだな」
「ええ。
資料を閲覧したいと頼まれまして。
来月末にはNYに戻るので、始めには報告書を上げてくれるそうです」
涼が背もたれに寄りかかった。