The side of Paradise ”最後に奪う者”
21.本当の提案
*
瞬に邪魔されず、綺樹を確実に捕まえられるのは大学の研究室だ。
不意打ちを狙って連絡をいれずに訪れた。
学習室で学生の卒論をチェックしているらしい。
涼はドアのところで綺樹の姿を見つけ、しばらく立ち止まっていた。
ダイヤモンドの鑑定は北の光でする。
ふとそんなことを思い出した。
白くて寒々しい光。
綺樹の横顔が余計に白く、透き通って見える。
集中している顔。
ゆっくりと近づいても気が付かない。
「熱心だな」
角の隣の席に腰を下ろすと、顔を上げて涼を見つめる。
ゆっくりと意志が戻ってきた。
驚いたようだった。
「どうしたんだ?」
この位の光でも綺樹の瞳が淡くなる。
それを見ながら涼は口元で笑いを作った。