The side of Paradise ”最後に奪う者”
「いいよ」
涼があの内容の話を、どう決断したのか興味もあった。
踏み切らないのだろうと、予想もしていた。
将来、子を巡って、ウルゴイティとダバリードと争いにならない可能性が、全くゼロではないのだから。
そんなリスクは避けるだろう。
もっと後腐れの無い相手を選んだ方が、賢い。
帰り支度をして一緒に校舎を出た。
「何がいい?」
いつもどおり聞かれるだろうと思って考えていたのだが、綺樹には一つ以外思いつかなかった。
「おまえの作ったのが食べたい」
涼との最後の晩餐だ。
予想外の答えだったらしく、涼が運転席のドアを掴んだまま屋根越しに綺樹を見つめた。
「そうか」
困っている。
「まあ、言ってみただけ。
なんでもいい」
綺樹は自分で助手席のドアを開けて乗り込んだ。
「西園寺の家でもいいのか?
おまえのマンションじゃ、フライパンさえないだろう?」
綺樹は涼の顔を見た。
そっちの困っただったのか。
知人にそんなことを言われて、困っていたのかと思った。